スクリーン印刷のニジミ・カスレ原因と対策|製版仕様で解像性を向上させる方法 ~カスレ編~
製版仕様で印刷解像性を向上させる方法について、前回はニジミや飛び跳ねが発生する要因や、版膜表面に平滑性や撥液性を付与することで改善した事例について説明しましたが、今回はカスレが要因になっている場合の対処方法について解説していきます。
カスレとは
カスレの定義は非常に幅広く、一概に言い表すことが難しい現象です。ペースト・インキの状態、印刷基材の状態、印刷条件など、さまざまな要因によって発生します。本稿では、製版においてパターンが忠実に再現されているにもかかわらず、印刷時にペーストの吐出がパターンと異なる場合 – コーナー部の吐出不良、線幅のギザつき、ペースト吐出部にピンホール状の未吐出箇所が多数発生する – といった問題に対して、製版で改善できる点に焦点を当てて解説します。
コーナー部分や直線部分の印刷解像性が望ましくない
製版においては、パターンの印刷解像性を向上させることが最重要課題です。具体的には、使用するペーストに対して適正なメッシュを選択しているか、乳剤厚みは適切か、パターンに見合った紗張り角度になっているか、といった点が挙げられます。これらの見直しだけでも、大きな改善効果が得られる場合があります。以下に、製版仕様の選定ポイントを見ていきましょう。
下のようなパターンに対して、印刷を行ったところ、コーナー部や直線部分にカスレが出現してしまいました。
乳剤厚を厚くすることで、ペーストがパターン端部まで回り込みやすくなる場合があります。また、ペーストの粘度調整が可能であれば、メッシュ下側までペーストが回り込みやすくなり、カスレが軽減する可能性があります。では、製版で使用するメッシュを変更するとどうなるでしょうか。
開口部(オープニング)が広く、線径の細いメッシュを選択することで、メッシュとパターンの干渉を抑制でき、印刷解像性の大幅な向上が期待できます。また、製版の紗張り角度により線材の影響を受けるケースがあります。
パターンに対してメッシュの角度が浅いと、線径がメッシュ開口部を覆ってしまい、ペーストの吐出を妨げます。
パターン全体に対してメッシュの角度を極力深く設定することで、メッシュ開口部がパターン内に多く配置され、ペーストが吐出しやすくなります。
このように、メッシュの選定や紗張り角度の最適化によって、カスレを抑制できる場合があります。なお、メッシュを変更する際は、ペーストの吐出量への影響を十分に考慮したうえで選定することが重要です。
▼対策のポイント(まとめ)
※以下はいずれも、ペースト吐出量への影響に配慮したうえでの対策となります。
- 乳剤厚を厚くする → ペーストがパターン端部まで回り込みやすくなる
- ペーストの粘度調整 → メッシュ下側までの回り込みやすくなる
- メッシュの見直し → 開口部が広く、線径の細いメッシュを使用することで吐出が上がりやすくなる
- 紗張り角度の最適化 → 角度を深くすることでメッシュ開口部が広くなりやすくなる
上記については、可能性のある方策であり断言することはできません。
パターンペースト吐出部にピンホール状の吐出不足が発現する
本来はパターン全体にペーストが吐出されるべきところ、下図のようにペーストが出ない部分が生じることがあります。
まず最初に疑うべきは、製版(メッシュ開口部)の目詰まりです。目詰まりがあると、当然ながらペーストが吐出されるべきメッシュ開口部が塞がれ、ピンホール状のカスレが発生します。洗浄後(乾燥前)および印刷前には、版の状態を必ず確認するようにしてください。
目詰まりがないにもかかわらずこのようなカスレが発生する場合は、製版仕様そのものが原因となっている可能性があります。線径の太いメッシュを選択した場合、メッシュ交点部の下部までペーストが回り込めず、ピンホール状のカスレが生じることがあります。これは、パターン開口部が大きいパターンに多く見られる現象です。開口部が大きいパターンでは、乳剤厚の効果が十分に発揮されず、メッシュ交点部が印刷基材に直接接触してしまうことが発生要因となります。このような場合も、メッシュの選定を見直すことが必要です。
ここで、目詰まりと深く関係する製版の洗浄について触れておきましょう。目詰まりを引き起こす最大の原因は、製版の不適切な洗浄にあります。
金属ペーストを使用したスクリーン印刷では、溶剤による版清掃が不十分なまま乾燥させてしまうと、ペーストがメッシュ開口部や交点部分に残留した状態になります。この状態では、洗浄に使用した溶剤のみが揮発し、ペースト成分である金属フィラーとバインダーが残ったまま硬化してしまいます。一度硬化すると、再洗浄を行っても固着したバインダーや金属粒子を除去することができず、スクリーンメッシュに恒久的に残留してしまいます。したがって、製版の洗浄においては、メッシュに付着したペーストを完全に除去することが極めて重要です。
製版仕様の見直しと並行して、印刷条件の微調整も有効な手段のひとつです。もし可能であればスキージの角度や押し込み・印刷スピード・スクレッパーの角度や押し込み等を変えてみる – こうした小さな工夫の積み重ねが、カスレの改善につながることがあります。カスレの原因は一つとは限りません。製版、メッシュ、洗浄、印刷条件、それぞれの要素を丁寧に見直すことが、高品質な印刷への近道です。ぜひ今回の内容を現場での改善のヒントにしていただければ幸いです。
▼原因と対策のポイント(まとめ)
- 目詰まりの確認 → 洗浄後(乾燥前後)・印刷前に版の状態をチェック
- メッシュ線径の見直し → 線径が太いとピンホール状カスレが発生しやすい
- 洗浄の徹底 → ペーストの残留・硬化を防ぐことにより、目詰まりを防ぐ
- 印刷条件の微調整 → スキージ角度・押し込み、印刷スピード、スクレッパー角度・押し込み等を調整可能範囲で行うことにより改善を促す
よくある質問(FAQ)
Q.カスレとニジミが同時に発生した場合はどうすればよいですか?
カスレとニジミはいずれも製版仕様(メッシュ・乳剤・洗浄状態)が影響するため、まずは版の状態と仕様を確認しましょう。ニジミへの対策については、前回の記事「ニジミ編②」もあわせてご参照ください。
Q.メッシュを変更する際の注意点は?
メッシュを変更するとペーストの吐出量にも影響するため、吐出量への影響を十分に考慮したうえで選定することが重要です。
Q.目詰まりを防ぐにはどうすればよいですか?
溶剤による版清掃を徹底し、ペースト(金属フィラーやバインダー)がメッシュに残留したまま乾燥しないようにすることが重要です。洗浄後(乾燥前)や印刷前に、版の状態を必ず確認しましょう。
Q.製版仕様を見直しても改善しない場合は?
製版仕様の見直しと並行して、スキージの角度・押し込み、印刷スピード、スクレッパーの角度・押し込みなど、印刷条件側の微調整も有効です。カスレの原因は一つとは限らないため、複数の要素を丁寧に見直すことが近道です。
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